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眠りの南

正座したまま一時間眠れる、そんな主婦の、読み書きと猫の日々

神の責任 (詩)

 

余白を連れて歩いていた時に

目の端を掠めたこの世の痛みによって

毎日息をするということが

棘だらけの車輪を回しているように思われた

 

痛みは空に上げる

始まりの場所に還しておこう

私たちをお創りになった方の元へ

何故最初の悲鳴から

あの方の判断は

いつも五秒遅れるのか

その五秒が

私たちの何年にあたるのか

知っておいででしょうに

 

少し先に

この星に似た星が幾つも見つかる

隠し忘れた贈りもののように

どれが本物の祝福か

どれが絶たれた望みの標本か

私たちは何も知らない

知らないということを

すり潰して飲み干し

息をしているしかない

 

車輪の棘はそのままに

青と白の縞模様の

切り揃えられた春を迎える

あの方は今日も

私たちをお創りになった責任を

おとりになる気はないらしい

 

 

 

 

 

 

家が愛しい

日々

家が好きだ。

自分の家という意味ではなく、

建物としての家。

 

赤い屋根、

緑の屋根、

屋上付き。

 

白い壁、

木の壁、

赤茶のタイル。

 

新しくてかわいい家、

少し時を重ねて味わいの出てきた家、

古くて趣のある家。

 

どんな家が特に好きということはないけれど、

でも、見た瞬間、あ、いいなと思う家はある。

出会った時に、家から拒否されていない、そんな感じを受ける。

 

車の助手席から、

別の日は、道を歩いていて。

いいなと思う家に出会うと、とても嬉しい。

 

でも、車はすぐ通り過ぎるし、

歩いている時でも、立ち止まって、

じっと眺めたりはできない。

仕方なく、また会いに来ようと思う。

愛しい。

 

これが夕方で、

家々に灯りがともりだすと、

なお一層愛しさは増す。

トン、トンと玄関のドアをノックして、

訪ねて行きたくなる。

 

今、何してますか。

晩ごはんは何ですか。

今夜見るテレビ番組は何ですか。

 

そして気付く。

私が愛しいのは、

建物としての家だけではなく、

その内部にまで及んでいることに。

玄関に花はあるの、

居間のクッションは何色、

犬か猫がいるのね。

 

ねえ、どんな風に幸せなの。

 

想像できるのは幸せだけ。

笑顔だけ。

 

わかっているけれど。

どの灯りのもとにも、

今、悲しみがあるかもしれない、

明日への不安があるかもしれない。

 

やがて、星が瞬いて、

その下に家が並んで、

絵本のようになる頃。

私は私の想像をなだめて、

少し冷えた祝福を、

夜気に乗せる。