痛快なこと
作家・佐藤愛子
先日、テレビのトークバラエティに、作家の佐藤愛子さんが出演されていた。
九十歳を過ぎて書かれたエッセイ本が大好評で、お話もそのことが中心だった。
私が二十代半ばの頃、佐藤さんのエッセイや小説ばかり読んでいた時期がある。
特にエッセイは、読むと元気が出て大好きだった。世の中や身のまわりの様々なことに、大まじめに怒っているのだが、そこに何とも言えないユーモアがあり、あはは、と笑ってしまう。
私はいつも怒るタイミングを逃してしまうので、エッセイの中で佐藤さんが怒っていると、まるで自分の分まで怒ってくださっているようで、とても痛快なのだった。
十年程前に、自分にいろいろ大変なことが重なった時に読んでいた本も佐藤さんの書かれたものだった。
エッセイではなく、佐藤さん自らが、ご自分の一族の波乱に満ちた生き様を書かれた、“血脈”という小説だった。
私は、それを読みつつ、目の前の出来事に対処していた。
すると、たった一人で苦しい中を歩いているという感覚が慰められるのだった。
楽な人生など、どこにあるだろう。
苦労が報われたり、問題が全て解決したハッピーエンドなどないのが当然だと、それ程つらくなく思えたのは、“血脈”を読んでいたからだ。
感謝している。
佐藤さん、これからもお元気でご活躍されますよう願っております。