“にじんでもにじまなくても月はあり鳴かないでいる猫を抱えて”
これは、私の詠んだ短歌ですが、今日はここに出て来る猫のお話です。
我が家に三匹いる猫の内、まだ紹介できていなかった、
末っ子の三毛の女の子、ナナ。
次男猫のサンに一か月程遅れてもらわれて来ました。
年はサンより半月遅れて生まれたそうで、同じく今四歳。
サンと同じく、野良猫の産んだ子ということで保護されていました。
うちに来た時は、生後三か月。
一般的なかわいいというタイプではなく、
容姿は普通といいますか……
いや、私的には、十分かわいかったですよ。
最初はおびえているのか、いつも隅っこでいましたが、
だんだんと慣れ、来てから二か月後ぐらいには、
自分から他の猫にじゃれついて、
ケンカをしたりもするようになりました。
そして、その頃からナナは、どんどん美少女になって行くのです。
逆三角形のちいさな顔、大きな瞳はキラキラ、
手足はすらりと伸び、毛並みは輝いている。
どうしたの、何が起こったの。
そんな風に、変わったところもあったのですが、
ただ一つ、変わらないところもありました。
鳴かない。
いや、全く鳴かないわけでは、もちろんないですが、
でも、鳴き声を忘れる程には鳴きません。
そして、それは今でもです。
人間に対しても、猫相手でも鳴かない。
ただ、人になついていないわけではなく、
気が付くと後ろにいる確率は、他の猫より多い。
ただ、無言で。
足にしがみついてくる、無言で。
背中に上る、髪をまとめているゴムをくわえ飛び降りる。
そんなこと、他の猫はしないよ。
それにどうして無言なの。
かわいい声をしてるんだから、にゃあと言ってよ。
じゃあ、紙に書いてよ、何をお話しするか。
にゃにゃみゃあ、にゃああ。
そしたら上手く鳴けるのに。
それなら上手く話せるのに。
ナナのママは死んじゃったの、
もっと泣きたいのに、にゃああ……
上手く話せないのは、私も同じ。
会話に原稿があれば、スムーズなのにな。
もう、大声で思いっきり泣いていい時は過ぎてしまったしね。
無口な同士、並んで黙って座っていようか。
私はたぶん眠ってしまう、眠るのは得意なの。
ナナちゃんもでしょ。
夢の中ではおしゃべりだし、泣き虫で、
ナナちゃんみたいに、高い所にも一瞬で飛び移れる。
私の夢の住所は、ナナちゃんの夢の場所の隣。
遊びにおいで、いっぱい話そう。
たくさん泣いてみようか……