お題スロット「秋の夜にしたいこと」
秋の夜長にしたいこと……
たとえばそれは、翌日の予定が特にない、
風のない静かな夜。
家族や猫も、別室で寝静まり、
夜更かしは続くよ、どこまでも。
熱い紅茶とクッキーを用意したなら、
手に取るのは、外国の古い小説。
重厚な表紙でなく、安価な文庫本だけど、
内容は同じはず。
家事だとか、突然の電話や訪問者。
それに、家族や猫の「ごはーん」や「おやつー」
なんて声にも煩わされない。
さあ、いつかの、誰かの、
哀しみや、喜びのさなかへと……!
時間はたっぷりあるんだから。
……あ、さ?
朝、なんで朝?
少し読み疲れたからと、
途中で横になって読んでいたのが、
今回の敗因か。
はたして何回目の。
秋の夜は、私の場合、
別に長くない。
暑くなく、寒くなく、
非常に眠りやすくて、
前後の季節より短くなるほど。
まあ、今回も、
雰囲気を楽しんだということで。
雰囲気といえば、子供の頃、
憧れた“秋の夜”というものがあったっけ。
その頃買っていたマンガ雑誌の付録に付いてきた、
ファイルに描かれたイラスト。
洋風の高く大きい窓。
その外には夜の深い森。
フクロウも枝にとまっている。
部屋の中には、
ひざ掛けを掛けた少女が、本を広げている。
傍らには、紅茶と、落ち葉と……
確か、そんなイラストだった。
大人になったら、
そんな素敵な“秋の夜”を過ごせると夢見ていた、
少女だった私。
まさか、本当の夢を見て、
朝まで過ごすことになろうとは。
なんか、けっこうな悪夢だった気がする。
眠ったっきり起きなくて、
やっと起きたと思ったら、
実は夢の中、
え……?